広く一般県民にTPPの様々な分野の危険性をわかりやすく説明し、お茶を飲みながらざっくばらんにお話するカフェを「TPPから食と暮らし・いのちを守るネットワーク宮城」の主催で開催しました。平成24年10月~11月の間に計4回行い、全体として約80名の参加者がTPPの危険性について活発に意見交換しました。
開催案内(PDF)
各回のレポートは以下の通りです
10月31日 (水)18:00~20:00
仙台市青葉区 東北学院サテライトステーション
第1回では、JA宮城中央会の職員が、TPPに参加した場合の農業や暮らし・地域社会への影響等を説明しました。関税撤廃により国内農畜産物の多くが外国産に置き換わり、食料自給率が13%に低下してしまうことや、医療や雇用・食の安全・安心に深刻な影響を与える懸念があることなどを説明しました。また、9月16日から19日の日程で訪韓したJAグループ米韓FTA視察団の視察結果についても報告しました。
参加者は韓国の現状を聞き、「韓国では、農業が経済発展の犠牲になったが、有事の時に食糧をどうやって手に入れるのだろう」「日本の大手のマスコミはTPPの悪影響について報道しないが、韓国のようにならないためには国民に広く危険性を伝えていく必要がある。」などとTPPの日本社会への影響について口々に懸念を述べました。
第一回目は、おにぎりを食べながら和やかなムードで終了しました。
11月5日(月)18:00~20:00
仙台市青葉区 東北学院サテライトステーション
~TPPは消費者の選ぶ権利を奪う~
第2回では、みやぎ生協の職員が、TPPに参加した場合の食の安全・安心への影響等を説明しました。消費者は買う物を選ぶ権利を持ち、守りたいものを選ぶことにより意思表示を行うことができる。TPPに参加すると遺伝子組み換え食品など安全性に疑問があるものが入ってきて、表示もされなくなるため消費者が選ぶ権利を失ってしまうことを強調しました。
参加者からは、「食べ物を購入するときに、安いものを買うと賃金の低下などに跳ね返ってくる。地元産や環境にやさしいものを選ぶなど、消費者も自覚的になるべき。」「今の消費者は、安さを追求するあまりなにがいいものかわからなくなっている。子供たちも化学調味料の味に慣れ、本物がわからなくなっている。」などの意見が出ました。
消費者にとって何を選択していくか、TPPとの関連で考えさせられる議論になりました。
11月13日(火)18:00~20:00
仙台市青葉区 東北学院サテライトステーション
~TPPにより生じる医療格差の懸念~
第3回目カフェでは、TPPに参加した場合の医療制度・医薬品分野への影響等をテーマに意見交換をしました。
坂総合病院の村口至名誉院長は、「日本の医療は、人件費より薬や医療機器にお金をかけている」と指摘。TPPで米国は医療機器のさらなる市場開放を求めており、参加すると国民皆保険制度が崩壊し、所得により受けられる医療に格差が広がる危険性がある」と話しました。
また、薬剤師で宮城民医連事業協同組合の武藤真也医療情報管理室長は、先進国の中でも薬価が高い日本がTPPに参加することで、さらに薬価を下げられなくなる懸念を語りました。
参加者からは、「アメリカの医薬品業界には不信感がある。TPP参加により医薬品価格が下げられなくなったり、医療費が上がるとお金のない人は医療を受けられなくなる。」「ツイッターなどで一般市民にTPP反対の世論を盛り上げていく必要がある」などの意見が出ました。
医療は命に直接関わる問題です。そして全ての人にふりかかる問題です。TPP参加は、国民の命を脅かす恐れがあるという認識を深めた回となりました。
11月21日(水)18:30~20:30
仙台市青葉区 仙台アエル6階 セミナールーム(2)A
~ISD条項は国家の主権さえも脅かす~
第4回目カフェでは、「毒素条項(ISD条項)」をテーマに、県内の弁護士の説明を聞き、参加した有識者等からの米韓FTA等の情勢報告をはさんで、活発に意見を出し合いました。
仙台中央法律事務所の弁護士 野呂圭氏は「ISD条項(投資家対国家間の紛争解決)は、TPPの趣旨に沿った制度変更を事実上強要し、例えば解雇権濫用法規などの撤廃を求められる懸念がある。また、TPPは 憲法のルールを超越し、国家の主権を否定するものだ」と語りました。
徳島大学名誉教授中嶋信氏は、「米韓FTAが発効した韓国では、大型店への規制緩和など、ISD条項が米国からの内政干渉の手段として使われ始めている。」と述べました。
JA宮城中央会営農農政部の山田和弘次長は、「韓国では米韓FTA発効に際し政府が示していた国民的利益はほとんど受けていないというのが一般人の感覚であり、TPP参加表明は断固阻止しなければならない」と述べました。
出席者からは、「ISD条項により、アメリカ企業を擁護するための裁判によって国民を守る制度が改変されてしまう」といった懸念の声が上がりました。
以上、計4回のカフェでの問題提起を踏まえて、TPPから食と暮らし・いのちを守るネットワーク宮城としてのこれからの活動につなげていきます。